腹部大動脈瘤に対するステントグラフト治療

腹部大動脈瘤とは?
心臓から拍出されるすべての血液は体のなかで一番太い血管、大動脈に流れ込みます。大動脈は頭と腕に向かう血管に枝分かれ後、背中の左側を通って胸を通過し腹部に至ります。ここで腹腔動脈(胃や肝臓への血液が流れる)、上腸間膜動脈(腸への血液がながれる)、腎動脈が枝分かれしますが、腹部大動脈瘤はこの腎動脈から大動脈が二股に分かれるまでの間の大動脈が膨らむ病気です。

体表では、‘みぞおち’から‘おへそ’までの間に相当します。
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大動脈瘤が拡大しても症状は特にありませんが、ひとたび破裂すると激烈な腹痛とともに、ショック状態となり、死に至る危険な病気です。

腹部大動脈瘤の治療法
手術は人工血管置換術とステントグラフト内挿術があります。
従来から行われていた人工血管置換術は全身麻酔と開腹が必要ですが、ステントグラフトでは開腹は不要で、全身麻酔も必須ではありません。ですから、手術侵襲(手術によって体にかかる負担)はステントグラフトの方が少ないという特徴があります。

ステントグラフト治療とは?
腹部大動脈瘤に対するカテーテルを用いた血管内治療をいいます。
ステントグラフトとは、形状記憶合金でできた骨組み「ステント」に、人工血管「グラフト」を縫い付けた筒状のものをいいます。
右の写真は、当院で主に使用しているステントグラフトです。
ステントグラフトを血管内に留置することで、ステントグラフトがバネの力で血管内に張り付いて、大動脈瘤に直接血流が当たらなくなり、破裂を予防します。
ステントグラフト挿入法
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写真で示したステントグラフトは通常は4-6mmのカテーテル(細い管)の中に収納されています。手術はまず、足の付け根を小さく切開して大腿動脈を見つけ、そこからカテーテルを挿入していきます。X線の透視画像を見ながら腹部大動脈瘤の部分でステントグラフトを展開し、血管のなかで数種類のパーツを組み立てステントグラフトを完成させます。

手術時間は1-2時間です。
手術当日より食事が可能で、足の付け根の傷が治った時点で退院となります。入院期間は術後約8日間です。

ステントグラフトの種類による違い
腹部大動脈瘤に使用するステントグラフトは、現在日本には5種類あります。
当院では特徴が似通っているものを除き、主に3種類のステントグラフトを患者様の動脈の形に合わせて使い分けています。
右の写真は、当院で使用しているステントグラフトです。

写真向かって右のステントグラフトはひとつのパーツでできているために、血管内でステントグラフトを組み立てる手技が必要ありません。
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ですから、手術時間が短く、造影剤の使用料が少ない特徴があります。下の写真は向かって右のステントグラフトで治療した腹部大動脈瘤です。
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一方、残り中央と左のステントグラフトは二つのパーツ(本体と短い方の脚に追加するパーツ)でできているため、血管内でパーツを組み立てる作業が必要です。しかし、パーツが二つの方が、組み合わせによって適合する大動脈瘤の形や大きさが増える利点があります。

構造上も胴の長さ(青線)や、バーブという返しのついた針金の有無(赤丸)などに大きな違いがあります。
また、胴体部分の曲がりやすさなども違いがあり、こういった細かなステントグラフトの特徴を利用して、治療を行います。
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下の写真は、胴体部が曲がりやすい右側のステントグラフトを使用して治療した腹部大動脈瘤の写真です。
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ステントグラフト治療には医師免許とは別に、ステントグラフト機種別にそれぞれライセンスが必要になりますので、ステントグラフトのライセンスを多く持つ医師の方が、いろいろな形の動脈瘤を治療することにおいては有利になります。

当院のステントグラフト治療の特徴
当院ではステントグラフト治療を行う医師が3名います。いずれの医師もステントグラフトの指導医を取得し、そのうち2名は4機種のステントグラフトのライセンスを取得していますので、腹部大動脈瘤治療をお考えの方はご相談ください。