がん治療の取り組み

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集学的がん治療について
がんの治療方法としては、「手術療法」、「放射線治療」、「化学療法(抗がん剤)」が三大療法として知られています。以前は手術が治療の中心でしたが、放射線治療の進歩によって、今では手術とそん色無い効果が認められています。さらには最新の抗がん剤やより優れた効果が期待される分子標的薬の登場で、抗がん剤治療も急速に変わりつつあります。また最近になって第四の療法としてのがん免疫療法(免疫チェックポイント阻害剤など)も大きな成果を上げており、保険適用拡大も進んでいます。
「札幌孝仁会記念病院」では最新の診断機器・治療設備を整備しており、様々な検査の結果も鑑みながら、最も効果を期待できる治療方法を探っていきます。また、患者様の状態や希望なども含めて治療方針についての総合的な判断を行います。
当院では三大療法およびがん免疫療法のそれぞれ単独治療のみならず、複数の治療方法を効果的に組み合わせる「集学的がん治療」を患者の皆さまに提案し、QOL(Quality of Life)の向上と根治性の高い治療をめざしてします。
しかし不幸にも再発・再燃など状態の悪化などもあり得ますので、その際にもできるだけの治療を行い、延命治療や緩和治療を積極的に行うべく、全力で患者様に寄り添う医療の提供に努め、ご家族様にもご満足いただける医療を推進することにしています。
当院で行う治療
手術療法
リアルタイムナビゲーションによる正確な手術
例えば脳腫瘍などにおいては、手術前のMRIやCTだけではなく、最先端の術中MRIや術中CTとナビゲーションシステムの組み合わせにより手術を進めます。すなわち、リアルタイムでがん周辺の正確な位置情報を把握しつつ、がん摘出状況を確認して、安全を確保して最大限の切除を両立させることが可能です。摘出率の向上は、予後に大きく影響します。
低侵襲の手術による治療
  • 消化器系のがんや婦人科がんなどには可能な限り腹腔鏡手術による低侵襲手術を選択します、さらに、最新の手術支援ロボットであるダヴィンチXiを用いた高精度な低侵襲手術についても、がんの種類にもよりますが今後導入を進めてまいります。からだへの負担が軽減され術後回復も早く、より安全・安心な治療となります。
  • 脳・頭頸部の腫瘍においては、従来の開頭手術に比較して、非常に小さい範囲の開頭で手術を行う方法である福島式キーホール手術を積極的に適用していきます。皮膚の切開も小さくなり、術後の回復も早くなります。熟達した外科手術の技術が必要ですが、当院では、開発者の福島孝徳教授やデューク大学で直接福島教授の指導を受けた入江伸介先生を中心に、キーホール手術に取り組んでいます。
放射線治療
最新装置によるからだにやさしい治療
最新かつトップクラスの放射線治療機器であるサイバーナイフ(CyberKnife M6)およびトモセラピー(Tomo HD)を導入し、低侵襲で最大効果を出すために放射線治療を行います。PETと放射線治療装置を備えた病院は札幌市内でもわずかです。さらに、2018年夏には次世代小型陽子線装置であるプロテウスワンを導入予定で、最新技術(ペンシルビームスキャンニング)による正確な陽子線照射が実現可能となります。サイバーナイフ、トモセラピーそして陽子線治療が揃う医療機関は国内では当院だけになる予定です。
切らずに治す最先端の治療
強い線量で短期的に治療する方法、インターベンションを組み合わせ、正常組織を温存して出来る方法、免疫療法との組み合わせ等、最先端の放射線治療を行います。前立腺がん、乳がんは切らずに治す方法を行っており、非常に質の高い方法を患者様に提供することができます。乳がんの術後照射では、心臓に照射されてしまう線量が20年後の虚血性心疾患リスクに繋がることが問題となりますが、精密な治療によってそのリスクを回避することが可能です。また、陽子線療法が加われば、肺機能の低下した患者様にも安心して治療を行うことが出来るようになります。患者の皆さまが、日常に近い生活を送りながらがん治療に取り組んで頂くこと、それが私たちの願いです。 r_center_bnr.png
化学療法(抗がん剤)
がんの種類や進行度に応じて抗がん剤による治療も行います。使用する抗がん剤の選択においては、国内外の最新の臨床試験の成績などの知識を活用して、最も適切と考えられる抗がん剤を選択します。吐き気などの有害事象(副作用)を軽減させる支持療法も適宜行い、治療の継続性を高めます。
また、新しいタイプの抗がん剤である分子標的薬も積極的に使用していきます。分子標的薬とは、がん化で生じた異常なタンパク質や、がん細胞の増殖などに重要な役割を担っている、さまざまな分子を標的としているため、がん細胞に対してより選択的に作用することが期待されます。現在も新たな薬剤の開発が盛んに行われており、患者様のがんに応じた適切な分子標的薬の選択によって、副作用の低減と有効性の向上が期待されます。
近年これら抗がん剤の選択において、バイオマーカーの存在が大きくクローズアップされてきています。バイオマーカーとは薬の効果、副作用の程度や、予後予測などを行うことのできる生体内に存在する物質のことです。事前に患者様のバイオマーカーの量や特徴などを調べることで、患者様の状態に応じた「オーダーメイドの治療」が可能となりつつあります。
その他の療法
免疫チェックポイント阻害剤治療
人の体の中には免疫機能による破壊が自分の細胞に向かわないようにブロックする仕組み(免疫チェックポイント)があります。このチェックポイントシステムを悪用することを身に着けた腫瘍細胞は、キラーリンパ球も攻撃できません。この時にチェックポイントを阻害する薬剤(抗PD-1抗体医薬:オプジーボなど)でがん細胞がそれを悪用できなくなります。オプジーボは新しい免疫療法の夜明けで、国内外で適応拡大が進んでいます。しかし副作用も報告されており、どのような症例により効果が期待できるのかを見極めるための技術開発が今後の課題です。
対象となる疾患
脳腫瘍、頭頸部がん、肺がん、乳がん、胃がん、肝がん、胆管がん、食道がん、膵臓がん、結腸がん、直腸がん、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がん、前立腺がん、膀胱がん、悪性リンパ腫、骨髄腫、転移性骨腫瘍、脊髄腫瘍 など
高度医療機器
  • 術中MRI
  • O-arm
  • ダヴィンチXi
  • サイバーナイフ
  • トモセラピー
  • 64列PET-CT